【鏖殺】の功罪 ~彗星の如く現れた環境破壊~【シノビガミ】

ぷろろーぐ

ある程度シノビガミにどっぷり浸かっている人ならば、態々再確認するまでもないぶっこわれ性能の忍法【鏖殺】。今回はコイツのやらかし振りを改めて再確認しつつ、有用性と弱点(リスクやデメリットと言い換えてもいいかもしれない)を検討してみようと思う。ゆるく

如何に【鏖殺】は環境をぶっ壊したのか?

ちなみに小生はTwitterで主催されるテキセ模擬戦にはここ一年近く赴いていない為、そこで起こった環境の変化については存じ上げない。故にどのようなメタゲームが回ったのかも知らないし、そもそもそんな考え方はないかもしれない。ただ、この忍法は一つの忍法で出来ることが規格外に多すぎるのである。改めて解体していこう。

①間合いのある接近戦攻撃忍法
これだけで相当に価値がある。ぶっちゃけ間合い2というのは最低限確保しておきたいラインなのだが、そうはいうものの打点とのバランスを考えると意外と難しい(特に中忍環境)。それをたかが【真蛇】から持ってくるという(軽くはないが)不相応に低いコストで実現できるというだけで一つの美点だと思われる。他の流派忍法が【長肢】やら【大詰】やら【影分身】やらで必死こいて確保してる中、コイツは悠々と一つの忍法枠で間合い2を確保している。まぁこれだけなら【血旋渦】やら、ややもすれば汎用忍法である【飛魂】でも出来ることではあるが

②自前の回避-2
これがデカい。いやデカいという言葉では足りない程の価値に溢れている。最早この部分だけで忍法の価値を大幅に押し上げているといってもまぁ過言ではない。回避-の重要さを理解している方には一々語るまでもないけれども、あえてこの凄さに触れるとする。例を挙げると、【秘翼】で回避-2積むには2R掛かるし、装備忍法や背景で-2を確保しようと思うとそれだけで忍法かもしくは背景の枠が2個は持ってかれる(【狭霧】や【羅盤】等、回避-を持てる忍法一個で掛けられるのは大体-1。例外は【陽炎】くらいのものだろうか)。これを”攻撃忍法の枠で”持てるというのが余りにもヤバすぎる。なんなら【真蛇】で取ってくるならついでに特技の後出しまで出来るのでピン持ちを避けることすらできてしまう。許されていいはずがあるだろうか、いやない(反語)

③全体攻撃
以上に挙げたものだけで一つの忍法として優秀過ぎるくらいの性能を持っているわけだが、あまつさえコイツは範囲攻撃が出来る。これによりこれ以前の全体複数攻撃は一気に過去にされたといって良い。そもそも、中忍頭以下における全体攻撃手段は何かしら使い勝手に難があった(【螺旋陣】なら間合いが0、【時雨】なら対象が二人までしか取れない、【逆運】は素の打点が0点、【車華火】はコストが重いなどなど)にも関わらず、これはそもそも素の忍法としての性能が非常に高い癖に全体攻撃なのである。

以上で見てきたように、この忍法だけジャンプ漫画振りのインフレを享受してしまっているとしか見れない優遇ぶりである。妖魔忍法であることのフレーバー的欠点とか、神通か遁甲をコストに支払わなければならないデメリットとかは、小生のような勝つ為ならこまけぇことはいいんだよメンタルの持ち主には些事である。つまり本来多様性があってしかるべき対人戦の環境において、忌むべき
「でもそれ○○でやったほうが強くない?」
が数多の忍法構成に言われてしまうのである(対人ゲームである以上ある程度はしょうがないが)。【螺旋陣】を頑張って実戦レベルに仕上げた構成を作ったとしても、結局は【鏖殺】を起点にした火力構築に対し、出せるパワーや使い勝手はどうしても劣る。そういった現象が、大概の構成に起きる。【真蛇】で取ってこれる都合上汎用性は非常に高く、そういった好きな忍法を活かして戦うというTRPGプレイヤーの幸せをこれでもかと言うほど踏みにじる程の性能で他の忍法を淘汰した罪は重い。ここまでいくと最早【鏖殺】を握らないことそのものが舐めプと言って良い。






















かに思われた















【鏖殺】、言うほど使いやすいか?「それってあなたの感想ですよね」

さて、ここまでアゲアゲに上げた忍法にも、弱点が存在する。ぶっちゃけ、見る人によっては致命的になりかねない程ヤヴァイ弱点が。ここからは上げて落とす漫才の如く、愛と憎しみを以てこの忍法の粗を洗いざらいぶちまけてしまおうかと思う。いざ往かん

①妖魔忍法である
妖魔忍法を修得することはつまり、シノビガミに数多存在する妖魔忍法所持者へのメタがぶっ刺さる体になることを意味する。【降魔】、【霊玉】、【聖紐符】【紅鏡】等、例を挙げればキリがない程に強力な隠忍妖魔メタの忍法が存在する為こいつが来た場合にはある程度の覚悟を決めた方が良いだろう(隠忍は最初っからそのハンデを背負ってるって?だまらっしゃい)。そしてシノビガミはTRPGである。つまり、戦って勝つことだけが全てではないという価値観の方が大勢いらっしゃる(というか小生の見てる限りこの界隈にいる人達はどっちかというとそういう傾向の人の方が多い気がする)。フレーバー的に危避する部分も多い、妖魔忍法であるという点は明確にデメリットなのである

②忍具リソース、そんな余裕ない
不相応のコストとはなんども言っているが、決して軽いコストではない。模擬戦ならばいざ知らず、メインフェイズを見据えるならば忍具をクライマックスに残しておける保証なんぞどこにもない。忍具というリソースをどこまで重く見るかは人それぞれだが、小生も含めたダイスを振る事に不安感しかない人間にとってはたまったもんじゃない程重いコストである

③【曲歌】とかでメタれる
先の二つは長所の方でもチラッと振れたが、こちらも決して無視できない弱点である。【鏖殺】に依存した構成を組み、喜び勇んで模擬戦やセッションに望んだにも拘らず敵対勢力には【曲歌】持ちが出てきた際にどうなるか。そう、【接近戦攻撃】を振り回すことしか出来ることのない悲しき忍者の姿がそこにはある。他にも【影斬】で【真蛇】を消されてしまったり「呪い」でのアタリが増えてしまうなど、ただ単に攻撃忍法を持つより脆弱性が大きいのは間違いない

④双子で取ってこれない(双子前の枠を食う)
これもかなりシャレにならない弱点である。大本は装備忍法な為双子で消せないし双子で取ってこれない。【見越】とは異なりいつまでも持ち続けなくてはならない取り回しの悪さがある。一応後出しが出来るので双子で出すことの強みは部分的にとれているが、それでも枠の圧迫ぶりは馬鹿にならない

まとめっぽいなにか

結局のところなにが言いたいねんと思われるかもしれないが、諸々の事情を踏まえたとしてもやっぱり【鏖殺】は強いし、なんならやらかしてるとしか言えない。【鏖殺】が否定し淘汰した多様性は余りあるし、隠忍ブックが刷られるまで、ひとが必死こいて空螺旋陣で中忍頭以下での全体攻撃を実現した苦労を嘲笑うような性能にはどこか憎らしさもある(ただの私怨)。が、この忍法が救った忍法構成があることも忘れてはならない。具体的には省くが、実用性に乏しい構成に一個【鏖殺】が入るだけで一気に美しく実用的に回る構成なんかもナンボか存在するのは事実である(小生調べ)。まさしく破壊のなかに創造があると言わんばかりのトリックスターではあるが、隠忍ブックが刊行されて早数ヶ月、【鏖殺】は特に環境を席捲してると言うほどではない。結局は好きな忍法で戦うのが楽しいし、それに比べれば勝つことは二の次という考え方の人が多いこともその一因かもしれない(雑に強い忍法を使うことに危避感がある挑戦心旺盛の方もいるだろうが)。【災雷】の例にもあるように人間やはりなんだかんだで適応するものだ。グダグダ言いはしたものの、小生はこの忍法が結構好きなんだと、毒にも薬にもならねぇ余談でこの話題を締めくくろうと思う

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